風景印探偵事務所~続風景印の風来坊

風景印や芸能などの記事を書いているフリーライター・古沢保のブログです。

11月21日・計6局・一葉忌と風景印

画像 JR新宿→鶯谷190円 都バス竜泉→白山上200円 JR水道橋→新宿160円 <計550円>  一葉記念館近くの東栄商会では、一葉の肖像を貼ったピーナツおこしを土産に買いました。単に私が食べたかっただけなのですが、ひょっとしたら一葉が営んだ荒物駄菓子店では、おこしなんかも売っていたかもしれませんね。 画像  11月23日の一葉忌には、本郷の伊勢屋質店が年に一度一般公開されるので見てきました。伊勢屋は1860(万延元)年創業で、その後少しずつ建て増ししてきましたが、1点目の写真は帳場の1階。現在は2階建てですが、一葉が通 画像った頃はこの母屋は平屋だったそうです。古くなった台帳を障子紙にしていたり、暖簾の頭が当たる部分が破けていたりと、営業時の品物が生々しく残っています。2点目の写真は土蔵の扉と内部。ここには確実に一葉の質草が保管されたことがあったそうです。「昨年は三大新聞に掲載されたため600人も見学があったけど、今年は400人くらいじゃないかなあ」とボランティアの方は話していました。 画像 この日、界隈の店では一葉忌にちなんだ商品を売ったりしていたのですが、本郷五局の前にも祝日なのにワゴンが。年賀葉書や記念切手を売っているのですが、念のため、今日は消印は押せませんよねと聞いてみると、なんと「いえ、風景印も押せますよ。今日23日の日付で」と言うではありませんか! ここ4~5年はずっと11月23日はこのサービスをしているそうで、それを知っていれば21日に押印しなかったのに…。今日は一葉の切手も持参していな 画像いし、残念に思っていると、局員さんが「品物をお買い上げいただいた方には一葉のポストカードを差し上げていますので」と言うので、年賀切手を購入して一葉忌の日付で押印してもらいました。今日は利用者が大勢いましたかと聞くと、「いえ、お客さんでまだ2人目です」とのこと(15時頃です)。すぐ傍には400人も一葉ファンがいるのだから、「一葉のスタンプが押せます」ともっと大きく張り出せば、みんな寄ってくるのでは。でも伊勢屋の2軒隣で、菊坂に面していて、いいロケーションにある郵便局ですよね。祝日に営業するというのも粋な計らい、来年は一葉の切手を持ってまた出かけたいと思います。  そしてもう1か所、11月23日に公開しているのが、一葉が少女時代を過ごした法真寺の境内奥にある一葉会館。一葉にまつわる絵画や玩具、映画化作品のパンフレットなどが所狭しと並んでおり、驚いたことに切手にもなった鏑木清方の下 画像絵もありました。「お年寄りが多いので皆さん朝に来て早く帰るんですよ」と案内の女性が話しておられ、無理を言って急ぎ足での見学になりましたが、見られて良かったです。  というわけで一葉ゆかりの地をたくさん見ましたが、竜泉の一葉記念館には年輩の方を中心に午前中から多くの見学者がいました。伊勢屋の前では近くの工事現場の作業員たちが皆、ケータイで蔵を撮影しているのが印象的でした。それくらい誰もが知っている文化人で、2004(平成16)年に5000円札の肖像になってからは一段と人気が加速したように思います。つるんとした瓜実顔に銀杏返しの風貌、経済苦と早世など、様々な要素がトータルで人心を惹きつけるのでしょう。  文学的には明治の文豪・夏目漱石らより一足早く、まだ文語体で句点も極めて少ないです。『たけくらべ』も最初は読みづらかったのですが、生まれ育った家を背負わなければならない旧時代の宿命が、ウェットになり過ぎずに描かれていて、読み進めるうちにどんどん胸に入ってきました。近世から近代への端境期のごく短い執筆活動でしたが、もっと長生きしていればどんな新時代の文学を書いたのか、非常に読んでみたかったと思います。  *単行本『東京「風景印」散歩365日』もご覧下さい!